マニアだけが知っている。テレビ・ウルトラマンの歴史。
写真はご存じ初代ウルトラマン、昭和のスーパーヒーロー。日本において彼を知らない人はいないに等しい。必殺技はスペシウム光線、両手をクロスさせるポーズは子供の頃、誰もがやったことあるであろう。
写真はゴジラと比べると体格的にひ弱なべムラー
写真の怪獣はウルトラマンシリーズ記念すべき第一回登場の怪獣べムラーである。一見すると普通の地味な怪獣だが、地球の土着な怪獣ではなく宇宙怪獣である。青い物体に姿を変え宇宙空間を飛行する特殊能力を持ち、また劇中において「宇宙の平和を乱す悪魔のような怪獣」とまで言われている。コイツを追ってウルトラマンは地球へやってきたのである。もしこの事件がなければウルトラマンは地球へ来る機会を得ず、1週間後にはバルタン星人に地球が征服されていたであろうことは間違いない。
写真は コアな男性ファンが多いウルトラセブン
2代目ウルトラセブン。知名度的にはここまでメジャーな部類。男性ファンが多い。それはセブンの世界観は宇宙からの侵略戦争であり、ミリタリー色が濃くマニアックなファンが多いのだ。
ウルトラマンの世界は、地球土着の怪獣が暴れまくるわけだが、セブンでは怪獣よりも宇宙からの侵略異星人が多い。地球人と同等かそれ以上の知性をもった異星人を相手に戦うわけだ。中には自ら戦う事もなく自分のペットである怪獣をセブンと戦わせ、負ければ撤収していくやつらも多い。「またいずれ現れる」と言い残して・・。まるでSF映画の世界である。それゆえに子供にはわかりにくい部分もあり、理解するには少なくとも小学校・高学年以上が望まれる。大人のファンが多いのはこのためだ。
写真は恐竜戦車と対峙するウルトラセブン
写真の怪獣は恐竜戦車。戦車の上に恐竜を乗っけるという画期的で斬新なアイデアだ。誰もが考え付きそうで誰もが実現することができなかった。ミリタリー色の強い一場面である。最後は地雷を踏みつけて爆破。このオチもきっと狙っていたに違いない。
写真は帰ってきたウルトラマン、体の模様が初代と違う。
さて問題の3代目「帰ってきたウルトラマン」だ。この辺からマニア以外の人にはついていけなくなるわけだ。まず初代ウルトラマンとこの帰ってきたウルトラマンは別のウルトラマンであることを理解してほしい。体系は同じだが、体の模様に若干の違いがある、よく注意して見てみよう。初代と区別するために、通称「新マン」あるいは「ウルトラマン・ジャック」と呼ばれている。劇中ではそのままウルトラマンと呼ばれているため、後付け的に使われた名称だ。
そしてこの頃から撮影が大がかりになってくる。まず、30分の放送枠で終わらせることができず、前編後篇の2回に分けて放送されることが多くなった。マンやセブンでもそのパターンは数回あったが、この新マンからそのパターンが群を抜いて多い。また怪獣が2体、3体と多く登場し始める。
それには事情がある。当時絶大な人気を誇ったウルトラマンではあるが、この頃になるとライバルとなる特撮番組が非常に増えてきた事だ。「仮面ライダー」とか、ああいうやつね。そこで同業他社との差別化戦略として単純なワンパターン30分ストーリーからの脱却が図られた。また怪獣を2体登場させることにより見せ場も多くなり、その2体を相手に戦い抜くウルトラマンの雄姿が際立つというものだ。
さらに最終回の設定はまたすごい。初代ウルトラマンを倒したゼットンを再び登場させ、バッド星人を加えての2対1のバトルだ。さらにいえば、このゼットンはウルトラマンを倒すため特訓を重ねられている。こんな不利な状況下 テレビのちびっ子たちはハラハラドキドキ、手に汗を握る展開だ。
ここでゼットン最強怪獣説を否定しておこう。初代ウルトラマンVSゼットンの戦いは、いつもの勝利への方程式から逸脱した戦いであった。通常であれば、まずは格闘戦から始まる、そして相手が弱ってきたときにトドメのスペシウム光線である。これはみんなも知っての通りだ。「無駄な格闘をせず、いきなりスペシウム光線すれば?」という意見があるだろうが、これが間違いの元だ。このゼットンとの戦いこそ、その素人意見の戦いの結果の始末である。このときウルトラマンは焦っていた。放送時間が残り少なかったからだ。登場してゼットンと対峙したウルトラマンは、いきなり必殺技のウルトラスラッシュを使った。だがゼットンはその瞬間を正面から見ておりバリアーで防ぐ。そして格闘戦に移る。一度だけ組み合って両者立ち上がり、ウルトラマンはスペシウム光線を放った。だがゼットンは余裕しゃくしゃくで胸で受け止めてしまう。そしてゼットンが放つ1兆度の熱光線によってウルトラマンは敗れ去った。
よく分析してみると、ウルトラマンは格闘戦を行っていないのだ。相手を投げ飛ばしたり、一度もパンチやキックを食らわせていない。相手を弱らせることなくいきなりの必殺技なのだ。まるで素人のやり方。体力十分のゼットンはウルトラマンの攻撃を正面から見て見切り、バリアーを張ったり、胸で受け止める余力十分の体勢だったのだ。決してウルトラマンの必殺技が効かないわけじゃないのだ。それを証明したのが新ウルトラマンである。
新マンは格闘戦においてゼットンを徹底的に痛めつけており、さらには抱えて空中に放り投げてしまう。空中でぐるぐる回り体勢を崩したところに必殺のスペシウム光線を放ち、ゼットンを爆死させている。ゼットンは1兆度の必殺技を持ち攻撃力は強いが、それさえ気をつければそんなに強くないのだ。
4代目はウルトラマンAである。この頃になるともう一般には知名度は全然ない。
さてこのウルトラマンAの世界観はまた一風変わっている。まずエースが戦うのは怪獣ではないのである。この事実はマニアだけしか知らないと思われる。エースが戦うのは「超獣」なのだ。超獣とは、一般の怪獣に人為的に手を加え改造手術され、体内にメカニックな部分を併せ持つ怪獣だ。もはや何でもありの世界がここから始まる・・。
写真は地球防衛軍TACの戦闘機を迎撃する超獣ベロクロン
この写真を見ての通り、手からミサイルを発射している。一般の土着怪獣ならば、せいぜい口から火を吐く程度だ。だがこのベロクロンは体内にいくつかの秘密兵器を搭載している。例えゴジラといえど、この超獣ベロクロンに勝つのは容易ではないと思われる。実際に怪獣と超獣が戦くシーンもあるが、超獣の全勝。火器兵器による圧倒的武力を行使した結果だ。
写真は必殺のメタリウム光線を放つウルトラマンA、角がカッコいいね。
そんなベロクロンもウルトラマンAの前には善戦空しく倒されてしまう。怪獣を超える超獣をも圧倒するエースの力が際立つ瞬間だ。
しかし超獣ってあまりにも安易な命名だ。この単語を辞書検索したところ出てこなかったぞ。もはや完全にマニアック。同業他社との差別化のため怪獣を脱却したわけだが、いくらなんでもやりすぎ~。
写真は異次元空間で敵のボス・ヤプールと対峙したウルトラマンA
怪獣を改造した超獣。つまり誰かが改造したわけで、それが敵のボス、ヤプールという異次元人だ。宇宙人ではないらしい。このヤプールが送り込んだ超獣と我らがウルトラマンAは毎週戦いを繰り広げていくわけだ。これはいままでのウルトラシリーズにない手法。通常は毎回、単体としての怪獣の出現で、登場は一回限り。だがこのヤプールは敵のボスとして君臨し番組中レギュラーの座を獲得している存在だ。「悪のボス」という存在がこのエースの世界で作られた。
写真は常食の石油を求めて街に上陸した超獣・オイルドリンカー
5代目ウルトラマンタロウだ。強そうで弱いのがタロウである。
ウルトラマンAの世界では、敵のボスはまだしも、怪獣を超えた超獣という言葉は世間に浸透せず失敗に終わった。(当たり前) ということで、タロウの世界では再び怪獣の世界に戻る。
しかし、いままで怪獣より強い超獣を相手にしていたエースの後に、タロウが再び怪獣と戦うとなれば、タロウの威厳が損なわれてしまう。そこで行われた第一話だが、まず最初に超獣オイリドリンカーが登場する。
写真は超獣オイリドリンカーVS怪獣アストロモンス
そこへもう一体の怪獣が現れた「アストロモンス」だ。この2体の怪獣はいきなりバトルに突入し、怪獣であるアストロモンスが超獣を倒し、さらには食べてしまうという完勝を果たす。怪獣より強いはずの超獣が、怪獣に敗れるという歴史的瞬間だ。これから戦うタロウの怪獣は今までよりさらに強いのだ。
写真は街で暴れまくる怪獣アストロモンス。超獣を一掃し我が世の春を迎えた。
怪獣 < 超獣 < 大怪獣(アストロモンス) さすがにタロウも大苦戦
そんな大怪獣を相手に戦うのがウルトラマンタロウの世界である。あまりにも怪獣が強すぎてタロウが死亡すること、2~3度あり(涙
初代ウルトラマンが怪獣ゼットンに敗れ絶命したときショックを受け涙した少年も多かっただろうが、このタロウの世界では、よくウルトラマン達が死んでしまうのだ。救援に駆け付けたゾフィーが死んだこともある。
それゆえタロウだけでは手に負えず、ウルトラ5兄弟集結して戦う場面が何度も見られた。とにかく強いのだ、怪獣たちが。
写真は第一話で怪獣アストロモンスに必殺ストリウム光線を放つウルトラマンタロウ
総力戦という言葉が合うだろう。ウルトラ5兄弟集結はおろか、ウルトラの父、母も何度も登場する。もはや個人のウルトラマンでは歯が立たなかったりするのだ。
子供心にとっては豪華キャスト出演でテレビに釘ずけになる場面が多い。が、しかし、なんとなくつまらなかった気がするウルトラマンタロウ。怪獣は強いのだが、ドラマ的なサスペンス感が希薄なのだ。
以上のようなウルトラマンシリーズの歴史である。
どれが一番面白いかと言えば、年代で異なると思うのだ。ただ画面を見て楽しんでいるだけの幼稚園・小学校低学年だとエース・タロウの世界の方がたくさんの怪獣が登場し、ウルトラ兄弟集結の豪華キャストで大いに盛り上がり興奮しそうだ。またストーリー的にも毎回人間ドラマが語られるが、実は主人公は少年である場合が多い。いい歳した大人がそれを見ていると、子供のわがままや勝手な思い込みにイライラしてしまう。少年を主体としたチープなドラマとたくさん登場する怪獣にウルトラ兄弟。画面はにぎやかだがはっきり言ってつまらない、と俺は思う。それは自分が大人だからだ。
それに対して、初代ウルトラマン・セブンの世界はずいぶんと違う。人間を主体としたドラマはあまり描かれてなく特定の人物に感情移入する場面は少ない。あるのはSF的侵略者とドキュメンタリ。ハラハラ・ゾクゾクするものがある。恐怖感である。登場人物も大人が多く、例えば世界的権威な学会とか、科学者、研究者が多く登場する。そうなってくると子供にはおもしろくないかもしれない。
分岐点となったのはその中間点である、帰ってきたウルトラマンである。すでに述べたように特撮番組の競合他社が増えたため、その後のウルトラマンの世界観をどうするかに決断を迫られたわけだ。もはやスペシウム光線だけでは、テレビっ子たちの人気を維持できないと感じた円谷プロは思い切って路線変更をした。完全に子供ウケする番組を作ることを。それが怪獣の2体同時登場であり、超獣、ウルトラ兄弟集結、チープな子供ドラマなストーリーである。もはやなんでもあり(笑
今現在ウルトラマンを語るとすれば、それは大人の世界である。だからこそ初代ウルトラマンとセブンが人気を博しているのだと思う。そして実際に自分にとっても印象に残したものは、初代ウルトラマンとセブンのほうだったと思う。
うーん、文章表現が下手すぎな俺だ。。。